あなたが作るおいしいごはん【完】
『………一緒に来るんだ。
“萌絵ちゃんを連れて帰って来る。”って
オフクロと約束したんだ!!
その為にこの家を何度も通って
遠くから見張ってたんだ。
やっと会えたんだから…。
やっと見つけたんだから…。
…なのに今さら
連れて帰らないワケにはいかない!!』
………怖い。
こんな薮嶋さん見た事がない。
小2までの付き合いだったけど
引っ越して行く前の“恭君”は
女の子に、小さな子に
とても優しい男の子だった。
それに…再会したばかりのあの時は
小さな頃の面影がまだ残っていて
こんな目つきでもなかった。
なのに今、目の前にいるこの男は
あの頃の薮嶋恭平とは違う。
再会して数日の間に
すっかり人が変わってしまっている。
私を無理やり捩じ伏せてでも
寛子さんの元へ連れて行こうとしている。
「…痛い…離して…お願い。
本当に…ごめんなさい。
私は…行けないよ。
………離して!!」
肩を掴まれた痛みに耐えながら
私はこの場から、この男から
逃げようともがき始めた時
『……ふざけるな!!』
再び薮嶋恭平の怒鳴り声が響いた。