あなたが作るおいしいごはん【完】

「…….嫌ぁ….やめ…和亮…さん。」

涙が頬を伝う中でもがきながら

抵抗を続けていたその時


……ピンポン…ピンポン…ピンポン。


荒っぽくインターホンが鳴り


……ガラガラッ…ガタン。


玄関の扉が強く開かれた音と共に


『………萌絵ーーー!!』


大声で私の名前を叫ぶ声がした。


その声に続いて玄関から


『…何してるんだ!!
恭平君、娘から離れろ!!』

『…萌絵ちゃん!!』

『…恭平!!お前は!!』


次々と男性の叫ぶ声と


…バタバタッ…ガタン…ドンッ


廊下を走る音や


『…うわぁっ!!離せっ!!』

『…おいっ!!』

『…逃がすか、コラッ!!』

『…逃がすな!!』


誰かが誰かと揉み合う音などで

辺りは騒がしくなった。


いつの間にか

私の目の前にいた薮嶋恭平の姿は消え

掴まれていた腕も顎も

いつの間にか離され

元の位置に戻ったと同時に


『……萌絵!!大丈夫か!?
ケガはないか!?』

私の前にしゃがみ込み

焦りながら私を心配する声に

少しだけ目線をあげると



……目の前には

私が今一番会いたかった

彼……押谷和亮がいた。



< 152 / 290 >

この作品をシェア

pagetop