あなたが作るおいしいごはん【完】
『…何だよ……萌絵。』
彼の声に視線を向けた私はハッとした。
なぜなら彼が…。
涙を流して泣いていたから。
さっき見せた滲んだ涙じゃなくて
本当に溢れ落ちている涙に
「…あっ、その…。」
私は何と言っていいかわからず
ギュッと心を掴まれ、締め付けられた。
「…あっ、あの…カズ…さん。
ごめんなさ…。」
戸惑いながら恐る恐る左手を伸ばすと
ギュッと握られ
『…そんな事…二度と言うな。
俺を…何だと思ってるんだよ…。』
そう言いながら
私の左手薬指にはめられた
婚約指輪にキスを落とした。
彼の熱い涙が
私の手の甲にポタリと落ちた。
『…確かに俺は
靖雄さんに感謝してるよ。
親父を説得してくれて
この職業に就く事を賛成してくれて
応援してくれた事は正直言って
何度頭を下げても、何度感謝しても
仕切れないのは当たり前だ。
ずっと恩義は感じてるし
恩返ししたいとも思ってきたよ。
でも…俺は靖雄さんへの恩義に
魂を売り払った覚えはない!!』
そう言い切った彼は
寝かされている私に
覆いかぶさるように抱きつくと
『…俺は萌絵だから好きなんだよ!!』
と、私の耳元で愛を囁いた。