あなたが作るおいしいごはん【完】
『…萌絵…泣かなくていいよ。』
体を起こして私から離れた彼は
パイプ椅子に座り直すと
『…俺もこんなに泣いたのは
子どもの頃以来だな…。』
と、苦笑いしながら
溢れる涙を優しく拭ってくれた。
ずっとつかえていた父の事。
彼は私の父の恩義と
結婚するんだと思い続けて
嫉妬して卑屈になっていた日々。
でも、彼は
私自身を好きだと言ってくれた。
「……ずっと不安だった。
『嫌いじゃない。』って言われても
『好き。』と言われても
カズさんが好きなのは私じゃなくて
父の恩義じゃないかって…。
カズさんは父の娘とだったら
別に私じゃなくても
誰でも良かったんじゃないかって…。」
『…そんなワケないだろ?
そんな馬鹿な事はもう言うなよ。
俺も冷たい事を言ってしまってたから
誤解させたり不安を与えて
萌絵を知らず知らずのうちに
追い詰めてしまっていたのかも
しれないけど
…俺が好きなのは正真正銘の萌絵だよ。
萌絵じゃなかったら
“お姫さま”なんて恥ずかしい言葉を
口になんかしないよ…。』
そう言って彼は私の涙を拭いながら
優しく微笑んでくれた。