あなたが作るおいしいごはん【完】

『…そう言えば
俺は萌絵からは聞いてないね。
多分……一度も……かな。

……「好き。」って言葉…。』

『…だよね?』と言いたげに

ほんの一瞬だけ意地悪そうな表情で

私の顔を覗き込んだ彼は

急に真面目な表情に変わると


『…頼む…萌絵。
聞かせて欲しい…萌絵の本音を…。』


そう言いながら再び私の左手を握った。

『…自惚れるようだけど
萌絵はきっと…いや絶対に
“俺の事を嫌いじゃない。”って事は
一緒に暮らしてきた日々の中で
わかってきていたつもりだった。

でも…萌絵は時々俺の前で
寂しそうで、泣きそうな目をしたり
何か言いたげで
言えなさそうな表情をしていたから

実際はどう思ってくれているのか
聞いてみたかったけど

“焦らなくて良い”とか
“ゆっくり、じっくり”とか

俺からそう言ってしまった手前
本当は俺も不安なのに
気にしていない振りをして
聞くのを躊躇ってしまっていた。

…だから、頼むから聞かせて欲しい。

萌絵の俺への気持ちを…。』

その言葉に私は胸が高鳴った。

27歳の大人の彼も本当は

私から『好き。』って言って貰えなくて

不安に感じていたんだね。






< 171 / 290 >

この作品をシェア

pagetop