あなたが作るおいしいごはん【完】

薮嶋恭平に掴まれた時は

正直嫌悪感しかなかった。

嫌で嫌でひっしにもがいてた。


だけど…彼ならドキドキして

甘い痺れが広がるけど

次第に私を安心させてくれる。


だから私はこの人じゃないとダメなのに

どうして裏切ってしまったんだろう。


『…胸が掻き毟られる。』

彼が病院で苦しそうに呟いた言葉。

あの言葉が胸に突き刺さる。


ごめんなさい…和亮さん。


カリスマ料理研究家として

皆から愛されている彼に迷惑をかけた。

今日は速水君が

シニアクラスの指導をしていても

生徒さん達はそれでも

彼がその場にいる事を

期待してたんじゃないかなと思うと


私の所為で

彼の仕事を休ませてしまった事が

申し訳なくて…自分が情けない。


その時

『………萌絵?…萌絵!!』

私を呼ぶ声にハッと顔をあげると

『……驚かせた?
もう、ドライヤー済んだよ。
《ジャスミン茶》もう一度入れたから
ゆっくり味わって
気分を落ち着かせるといい…。』

そう言って彼は

目の前のミニテーブルに置かれた

《ジャスミン茶》の湯呑みを指差すと

『…どうぞ…お姫さま。』

と、優しく微笑みを浮かべた。



< 195 / 290 >

この作品をシェア

pagetop