愛すと殺すと

「あ、千晶。もう時間だから帰らなきゃ」

「うーん…」


困ったように笑って。


「次、英語なんだ」


――チャンス。

「そっか。じゃあね」

「うんっ」

彼女は足取り軽く去っていく。

それを横目で確認し、後ろの席の帆音ちゃんにそっと告げる。

「帆音ちゃん、私保健室行ってくるね」

「え?何かあったの?」

「あ…いや、なんかお腹いたくて」

「わかった。先生に言っとくね。大丈夫?」

「うん…」

病状を演技で表し、彼女を追っかける。

階段を降りたのはわかったから、たぶん下。

とりあえず下の階に降りなくちゃ。

階段を降りる彼女を見つけたのは、直ぐだった。


ふらふらと行く宛もないのに歩く。

…こんなのにまけるなんてなあ。

胸のもやもやを認識しながら、彼女に声をかけた。



「千晶ちゃんだよね?」



< 229 / 245 >

この作品をシェア

pagetop