【BL】君と何処へ行こうか?
採寸は30分程度で終わり、僕達は店を後にした。
スーツはオーダーメイドだとかで出来上がりに時間が掛かるらしい。
すっかり陽が暮れ、町は夕焼け色。
「…………麻斗、俺は変えられただろうか?」
前を見たまま、彼は呟いた。
「………悪くはないんじゃない。」
「澤村組は変わってきている。だがまだ反発派がいるのも事実。難しいことだと分かっているが、俺は皆が同じ思想の元集えたらと思っている。だからもう少しだ。あと一歩。」
「………うん。」
「けど少し寂しい気もする。俺が約束を果たしたとき、君の笑った顔を見るのが楽しみだ。その反面、離れていってしまう怖さもある。」
前に向けられていた視線が隣に並んでいた僕に向く。
「俺はこれからもずっと側にいて欲しいと思ってる。」
真っ直ぐなこの視線が僕は苦手だ。
「ダメだろうか?」
「……………さあね。考えておくよ。」
それは出来ないと思っていながら、口では言い切れない。
アンタの理想とする景色に僕は必要ない。
「いい返事を期待してる。……スーツ、楽しみだな。」
力に任せて生きてきた……
所詮、僕は…………。
「出来上がったら一番に見せてくれ。」
「………はいはい。」
君と共に生きることなんて出来ないんだ。