【BL】君と何処へ行こうか?


それから10年……僕は28となり、彼は29となった。

僕と彼とは1つしか歳が違わない。



「……準備は出来た?」
「ちょっと待ってくれ、ネクタイが結べなくてな…」


今日、彼は澤村組の組長となる。


10年、ここまで来るのに彼は努力を惜しまなかった。

僕はそんな彼を隣で見続けた。


「全くもう……ほら、貸して。」
「あ、ああ…すまない。」


決してこの組に入ったわけではない。
ただ側に居ただけ。



そしてついでに守ってやっただけだ。



僕の事を幹部だと言う新入り共もいるが、面倒だから放っておいているだけ。



「できたよ。」
「ん、ありがとう。」
「僕は組員じゃないから継承式には出られない。」
「俺が口添えすればいくらでも入れるのに。だいたい、組の奴らは麻斗の力を認めてる。今更文句を言う奴は居ないぞ?」
「これは僕のけじめだよ。……式には出られないから、今のうち言っておく。7代目組長継承、おめでとう。」



澤村ははにかみ、ありがとうと口にする。


「長く待たせてしまった。だが、本番はこれからだ。これからが大変になる。まだ俺には君の力が必要だ。手伝って、くれるか?」
「君が組を変える、その約束を果たすまで僕は離れてやる気はないよ。」
「そうか。それは心強いな。」



安心したように笑う彼の背中を叩く。


「ほら、早く行きな。遅刻する。」
「ん。行ってくる。」


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