【BL】君と何処へ行こうか?
さて、式が終わるまでは僕も暇だし……
中庭の方で昼寝でもしてようかな。
中庭に聳え立つ松の木の下。
その木陰で昼寝をするのは僕の日課だったりもする。
今日みたいに天気がいい日は気持ちがいい。
頬を撫でる風が睡魔を連れてくる。
「一樹さんが組を継がれる……この澤村組も終わりだな。」
聞こえてきた声に微睡みから意識が戻る。
「何でも一樹さんは殺生を好まない、甘いお方だと聞く。」
ああ、反閥組か。
澤村 一樹は良くも悪くも甘い男だ。
当然、やり方が気にくわない連中も出てくる。
「このまま澤村組が衰退する前に一樹さんを片付けるしかーー」
「ーーねえ、」
僕は木陰から身を出し、話し声の輪に近付く。
「僕もその話交ぜてくれる?」
「ーー!お前、一樹さんの!」
「ちょうど退屈してたんだ。その話、詳しく聞かせてよ。」
「さ、さあ?何の事かな?」
「へぇ、とぼけるんだ?だったら、話したくなるようにしてあげようか?」
「ひっ………」
暴れネコってあだ名は伊達じゃない。
もちろんあの頃より腕っぷしは上がった。
もう、誰にも負けたりしない。
「ま、待ってくれ!そういう力での解決を一樹さんは望まないはずだ!」
「確かに彼は望まないだろうね。………けど、僕はこの組の人間じゃないし、彼の家臣でもない。僕は、僕の判断でしか動かない。」
ニヤリと笑えば男たちは後退していく。
僕は一歩踏み出し、距離をつめる。
「ーー麻斗!」
呼び掛けに僕は歩みを止めた。
振り向けば遠くから手を振る澤村の姿。
どうやら式を終えたようだ。
「……助かったね。でも次はないよ。」
僕は男たちに告げ、澤村がいる方へ足を進めた。