【BL】君と何処へ行こうか?
それからはあっという間に時間が流れた。
澤村は自分の思い描く組を造り上げていく。
人の為、世の為に動き信頼関係を築く。
今では澤村組を見かけると感謝の言葉を掛ける人々が増えた。
もちろん内部ではそれを良しとしない連中も多くいた。
それを早いうちに消すのが僕の役目。
澤村は知らない。
これは僕が独断でやっていること。
「………麻斗、聞いているか?」
「え……」
顔を覗き込まれ、思案していた頭が現実に引き戻る。
「どうした?体調でも悪いか?」
「いや、何でもないよ。」
「そうか?無茶はするなよ。」
「それより何の話だっけ?」
「ああ、君のスーツを新調しようと思ってな。採寸が必要だから一緒に店まで行こう。」
ニコニコと微笑む彼とは反して僕は眉間にシワを寄せた。
「いらないよ。僕は組の一員じゃないんだからスーツが正装って訳じゃないし。」
「いいじゃないか、俺が君に贈りたいんだ。今日は俺と君が出会った日だろう?」
マメな男だ。
そんな昔の事を覚えているなんて。
まあ、僕も大概だけれど。
店まで護衛なしで歩きたいと我が儘を言って、組員たちを困らせる様はまるで子供のようだった。
一度言ったら利かないことを充分理解している組員たちは、仕方ないと引き下がった。
が、こっそりと尾行していることを僕は知っている。