桜が咲く頃~初戀~
田舎の道は舗装が無い道が多くゴトゴトと何処までも砂利が車を揺らしながら進んで行く。香奈はその後ろの席に窓の外に見える景色を見ながら身を任せ身体を左右に揺らしていた。

窓を少し開けて朝の冷たい空気が幾分か温かみを付けている外の空気を車内に滑り込ませた。寒の戻りと言っていた通りにその空気は香奈の頬をチクチクと刺していた。


今朝は圭亮は来なかった事も残念に思いつつ、圭亮の「告白」を思い出すと胸が自分でも分かる位にトントンと鳴った

『香奈ちゃんがずっと好きだった』

と言った圭亮の言葉には嘘は全く感じられなかった事が何だか照れくさいと思うと圭亮のあの夜のバツの悪そうな顔になって帰って行った姿を昔の記憶に甦らせた。


あれは…

あれは香奈が小学5年生の夏休み。毎年1人で訪れていたおばぁちゃんの家。あの頃は大阪の家が居心地がとても悪くて息が詰まっていた。本当の父親を父親を父とは思えない香奈にとっては赤の他人と家に居るという空間が気持ち悪くてしかたなかった。


それから逃れるかの様に香奈はおばぁちゃんの家に夏休みはずっと居たのだ。


香奈はおばぁちゃんの家の縁側が大好きだった。ここで過ごす時間が唯一の生きていると実感を与えてくれる場所だった


香奈はおばぁちゃんの家の縁側で夏休みじゅう毎日本を読んで過ごす。
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