ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
「あった! うんわかるわ。でも今から用意するから時間掛かるけど」

「いいよ! 先に着いたら待ってるから。もし迷ったら携帯に連絡して」

「うん、わかった。じゃぁまたあとでね」

 本当に現実だろうか? さっきまであんなに落胆していたのに。今日は朝から久留美とのメールを終わりにすることと、妻、珠希とのことで苦悩していたのに。こんなにもHAPYYになるなんて思ってもいなかった。

 今は、今夜だけは久留美のことを考えよう。

 念のためにメールで自分の携帯番号を送り、大急ぎで支度をする。寝汗をかいていたので、シャワーを浴びる。ステレオからかけっ放しのstray・cat。ぼくはそのままにして、熱いシャワーで汗を流した。

 着替えをして部屋をあとにする。急いでいたので原付で出発する。昼間は幾分暖かいが、夜になると冷え込むこの季節。N3‐Bに袖を通したのは正解だ。夜空を見上げると星こそ見えやしないが、さっきとは違った夜空。透き通った黒色。今にも星の輝きが見え出しそうだ。ぼくは、待ち合わせ場所へと原付を飛ばした。

 幾つかのネオンライトを潜り抜けて、待ち合わせ場所に到着。ぼくはふたたび久留美からのメールに気付く。

『今、原宿ら辺。車は白いワゴンR。』

 もうすぐ、久留美が夜風とともにやって来る。迷子の子猫がやって来る。ぼくは道路隅に原付を停めて、白いワゴンRを探した。

 夜風はぼくの肌を殴るように吹き荒れて、ぼくと一緒に久留美の登場を待ちわびる。

 しばらくすると、それらしき車が視界に入って来る。女性ひとりで乗っている白い車。その女性は携帯電話を片手に、くわえ煙草で徐行運転していた。

「久留美ちゃん?」


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