ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
「とりあえず、一時間で」

 ぼくと久留美は店員に案内されるまま窓際の部屋に入って、別々のソファーに離れて座った。それからそれぞれのドリンクを注文。久留美が車なので、ふたりともソフトドリンクにする。

「何にする?」

「ミルクティー」

「え~と、ホットとミルクティーをお願いします」

 案内してくれた店員にそういうと、久留美が口をはさんだ。

「なんか食べたい」

「お腹空いてるの?」

「これ食べたい」

 久留美はメニューの一覧、スナック詰め合わせAセットを指差して店員に注文した。カラオケBOXとはいえ、初めて逢った者同士、緊張感という空気がいったり来たり。

 無言の空間が広がり出す。

 ぼくは、何か話さなくてはと思った。

「あ~……」

 そのとき、店員が注文したメニューを持って入ってきた。テーブルに並べられるメニューたち。ぼくと久留美はそれぞれのカップを持って乾杯した。

「あたし、お菓子ばっかり食べてんのよ」

 スナック詰め合わせAセットを摘みながらつぶやく久留美。投げ出されたミニスカートの足元がとてもきれい。

「なんか歌ってよ!」

 歌はあまり得意な方ではなかったけれども、久留美のリクエストに仕方なく一曲披露した。久留美はどうも歌は苦手らしく、それからふたりは、お互いのことを話し合った。
 窓の外には通りを走る車のネオンライト。キラキラと反射して、ふたりの出逢いを歓迎しているみたいだ。

「あたしって、男運悪くて、なんか似たような彼氏とばっかり付き合ってんのよ。今の彼氏もよく手を上げる人で、この前まで顔とここにアザがあったんよ」

 左肩を指差して久留美は話す。ぼくは、思わず微笑んだ。
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