ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
「メッチャ好きやったんよ! あのバンド」

 すでにそのバンドは解散していたが、久留美とぼくはそのバンドの話しで盛り上がる。ひとしきり話すと久留美は話し疲れたのか、黙り込む。気まずい空気が漂う。

「何か、ビデオでも観る?」

 ぼくは気をきかしてビデオを勧めてみた。

「なんか、映画とか有るん?」

「えっと、これとかどう? ベルベット・ゴールドマイン」

 以前、三上からもらったサンプルテープがこんなときに役立つなんて。

「あ、それ観たい、この映画観たかったんよ!」

 ビデオテープを手に持って声を上げる久留美。ぼくはうれしくなって、すぐさまデッキに入れ、再生。ふたりで映画を観る。そして久留美の隣に腰を下ろしたとき、偶然にも久留美の脚にぼくの手が触れてしまった。

 タイツ越しのきめ細かなざらつきに、気持ちが走り出す。

「脚好きなんだ。ちょっと触ってもいいかな……」

 当たり前に断られると思っていたのだが、久留美は呆気なく答えた。

「うん、いいよ!」

 そのことばに甘えて、タイツ越しの脚を撫で回す。繊維のざらつきが指先の指紋を刺激するかのように伝わってくる。身体に合った肉付きの脚。指先を跳ね返す弾力にこころ震えた。
 ぼくはたまらなくなり、指先が自然と上に導かれていく。久留美の体温がひしひしと伝わってくる。

「駄目、駄目」

 ちいさく抵抗する久留美。ぼくは身体を近付けてキスをせがんだ。

「キスしていいかな?」

「うん、いいよ」

 ゆっくり瞳をとじて、うなずく久留美。ぼくは清く美しい久留美の口唇に、自分の口唇を重ねる。何度も、何度も小鳥たちのように繰り返す、バード・キス。それからお互いの舌先を絡め合うディープ・キス。ぼくは気が遠くなりそうになる……。
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