Crescent
「澤野さん」
名前を呼ぶと振り返って私に気付いた。
「思ったより早かったな」
「早く見たくて走って来ました」
花火よりも澤野さんに会いたかったから走って来たんだけど……。
「早く座りなよ。
さっきも大きなのが上がって綺麗だったよ。
あっ上がった!!」
言われて座ると直ぐに花火が上がった。最初に大きく上がってその後小さいのが連続で次々に夜空に咲いて消えていった。
「キレイですね」
「キレイだな」
自然に下ろしていた右手の小指が澤野さんの手に触れた。
ハッとして指を引っ込めた。
花火に夢中で澤野さんは気付いてない?
隣を見ると澤野さんも私を見ていた。
ちょっと気まずい……。
「あっ、あの電話で聞いたランチに来る作家の先生って凄い人なんですよねぇ?」
「えっ、あぁ橘様の事?
有名らしいんだけど実は最初の頃はそんな事知らなくて――――」