Crescent




「だいたい彼女なんていないし」


「付き合ってる人いないんですか!?」


「いないと変?」


「変なんて言ってませんよ」


澤野さんの彼女がいないって言葉にほっとしたのも束の間。


「俺に彼女は必要ないから。
これからも誰かと付き合うつもりはないし。

だからそう云うの気にする必要ないから。
琴音ちゃんとはずっといい友達でいたいし何かあったら遠慮しないで言いな」



澤野さんの口からこんな言葉を聞くなんて思わなかった。


告白して振られた訳じゃないのに自分の想いを否定されたような気がした。



なんて言って良いのか分からなくて……。
澤野さんも黙ってしまって無言のまま二人で坂の上まで歩いた。
返事をしなかったから気を悪くした?


「また一緒に月を見ような」


「はい、また一緒に月を見たいんで誘って下さいね。
また電話しますね」

「じゃあ、また」



良かった。
いつも通りの澤野さんだった。
また一緒に月を見ようって言ってくれた。



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