Crescent
「すみません。
橘先生、こちらに来てますよね?」
「橘先生ならそっちのテーブルがある方です」
「ありがとうございます」
「先生、琴音さんの荷物持って来ました」
私のバッグだ。
「すみません。
わざわざ持って来てくれたんですね」
「二時間ぐらいしたら、ここに持って来るように先生から言われてたんです」
「夕方、次の仕事を持って来てもらう約束になっているの。
来たらアンジュに来るように言って」
「先生はまだマンションに戻らないんですか?」
「私は、お店を見てないとだから」
「お店ですか……?」
「そうなの。
だから、マンションの方を頼むわね」
「……分かりました」
彼女は要領を得ない様子で帰って行った。