君と私を、夜空から三日月が見てる
                 ☆

モールゾーン事務局で書類を書いて、エテルノゾーンに戻ったのは午後4時近く。
その後、残っていた業務を片付けて、私と柿坂君が退勤したのは午後7時近くだった。

「ふぅ・・・今日は参った~・・・」

職場から駐車場へと向う歩道には、家路を急ぐ学生さんとかサラリーマンとかOLさんとかの雑踏がひしめいている。
少し早足のはずの私の隣を歩きながら、柿坂君は大きくあくびをして、疲れた顔で夜空を見上げた。
なんとなくそれにつられて、私も思わず空を見上げてしまう。
職場であるショッピングモールの明かりがにじむ中、春先の夜空は紺色で、その合間を強い風に飛ばされた桜の花びらが舞っている。

遠くに、綺麗な綺麗な三日月が浮かんでいた。

季節は違うけど、あの日、母に連れられた幼い私が『東京湾wonderland』で見た三日月と、なんとなく似ているような気がした。
私は、横目でちらっと疲れた顔をしてる柿坂君を見る。
ふんわりとした癖毛が、春の夜風に煽られて神秘的な目元にかかって揺れている。
明らかに私より長い睫毛。

この人、ほんと、王子様みたい・・・・
綺麗な顔立ちだな・・・


そんなことを思って、顔が赤くなりそうになったから、私は、ごまかすように柿坂君に言った。

「柿坂君、いつも怒られてるの?ボスに?」

「うーん・・・・かも?」

彼はそう答えて、無邪気に笑った。

「色々仕事あって、それやってると~・・・ボスの指示を忘れちゃったりよくするからさ」

なんの悪気もなさそうにそう言って、柿坂君は、うっとうしそうに自分の前髪をかきあげる。

「今度からメモとかしといたほうがいいよ?」

「そうしようかな」

私の言葉に、柿坂君はまた無邪気に笑った。
駐車場にたどり着いた私たちは、お互いの車の前に立つ。

「じゃあ、お疲れさま!」

「おつかれっす~」

私より先に、柿坂君は、ぴっかぴかの新車であろう白い軽ワゴンに乗り込んだ。
私も、4年前はぴっかぴかの新車だった赤い普通車の運転席に乗り込んで、エンジンをかける。
その時だった・・・

先に車に乗り込んだはずの柿坂君が、それこそしょぼーんとした顔をして、なぜか、自分の車を降りて、私の車に近づいてきたのだ。

「????」

思わずきょとんとしてると、彼は、私の車の隣に立って窓をこんこんと指で叩いてくる。
私は、迷わずパワーウィンドを下げた。

「どうしたの?」

その問いかけに、柿坂君は、申し訳なそうに笑ってこう言った。

「今朝・・・ガソリン入れ忘れて、エンジン・・・かからないんです。
ものすげー申し訳ないんですが・・・ちょっと、家まで・・・乗せてもらえないですか?
ガソリン、買い置きしてるんで・・・・」

そう言った彼の表情が、あまりにも可愛かったので、私は思わず・・・・

「全然いいよ!どうせ帰ってもテレビしか見ることしないしね!」

なんて、満面の笑顔で答えてしまったのだ!!!!


ああ・・・
もぉ・・・
ほんと、顔がいいって得だよね!!









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