ファンレター
「9時か10時にも見回り入ると思うよ。どうするの?」
「そこはトイレってことでいいじゃん」
「えー、無理だって!完璧目付けられてるもん」
あー、やっぱり無理に決まってる。
もう少し遅い時間ならなんとかなっても、8時なんてまだみんなが各部屋間をウロウロしているに違いない。
「じゃあ、10時までに戻る?」
「……」
それなら、できるかな。
自由時間にまぎれて飛び出して、就寝がかかる10時までに戻れば。
「うん……。それでいこう!」
十……
嫌でも近くにいた十に、こんなに苦労しないと会いに行けないなんて思わなかった。
そして私は、そんな思いをしてまでも、今すごく十に会いたい。
ビルの谷間に見える空。
同じ雲を見ることができるくらい、近くにいる。
お願い神様。
どうか、十に会えますように。