ファンレター



「ここかぁ。無事着いたね」



白い看板に、赤い蛍光灯の文字が浮かぶ。

『FUTURE SPACE』

とりあえずやって来た下見。

今夜、十はここに来る。



「ホテルから20分くらいかな。タクシー使えばもっと早く来れるよ」



多美がいなかったら、私一人では絶対無理だった今回の計画。

まだうまくいくかはわからないけど、多美とならやれそうな気がする。

そうだ、多美となら山口だって恐くない!



「なんかカフェみたいだけど」


「昼間はそうなんだよ。夜になるとクラブに変わるって感じじゃない?」



店内に入った私と多美は、辺りを見回した。

決して派手な服を着ているわけでもないのに、都会の人ってなんとなく賑やかに見える。



私たちは、緊張しながらアイスティーを頼んだ。

すでに悪いことをしているような、どうも堂々と座っていられない気分だった。



「涼、見て。今日のイベントのポスターだよ」



多美に言われてカウンターの横を見ると、そこには眩しい黄色の告知ポスターが貼られてた。

そしてその前には、立ち話をする女の子達がいる。



「どうする今日。十誘う?」


「サキが来るならいいかもしれないけど、私達だけじゃダメでしょ」



なんだって?

なんとも聞き流せない内容だ。





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