ファンレター
アップで見ても、やっぱり可愛い。
私だって化粧をすればこれくらい……無理かな。
「いじめないわよ、カワイイ十の友達なんでしょ?でもね、もう少し気を使った方がいいわよ。十の周りはキレイな子が多いから。こんなんじゃ、友達でいることさえ難しくなるかもしれないわね」
そう言って、濱田サキは自分のポーチからスティックを出すと、私のあごを指で持ち上げて、色付きリップの唇をピンクのルージュで包んだ。
「余計なことはしないでね。桂もよ。十が今大事な時だって分かってるでしょ」
「余計なことって…、十のためにやってるだけだよ」
なんだか、私がいるべき場所じゃない雰囲気。
二人の関係もよくわからないけど、やっぱり私、来なければよかったかもしれない。
さっきまで私を包んでた十のにおいなんて、一気に吹き飛んでしまった。
「尾根さんに何言われるかわかんないんだから。私は知らないわよ」
そう言い残して、濱田サキは部屋を出て行った。
尾根さん……
あぁ、十のマネージャーか。
それから部屋には、後味の悪い空気が流れた。