ファンレター
「気にしなくていいから。って言っても無理か」
気を使ったように、苦笑いを見せる桂カメラマン。
耳には再び低音のミュージックがよみがえってきた。
「十は結局みんなから可愛がられてるってことなんだ。だから、みんな心配してるだけなんだよ」
「はい、大丈夫です」
得意の嘘が出てしまった。
本当は思いっきり気にしてるくせに。
やっぱり私の存在は、十の邪魔になってしまうのかもしれない。
十に会えてうれしい気持ちと、来なければよかったという後悔の気持ちが、複雑に私の中を支配した。
短いスカートをぐっと膝へ伸ばす。
廊下からは、勢いのある足跡が聞こえてきた。
「終わったよ、羽田さん!」
十の笑顔が一層私を苦しめる。
やっぱり、十が好きだ。