ファンレター




部屋では廊下まで聞こえそうな大声で、大北さんと多美がはしゃいで話をしてた。



「おそーい!何してたのよ、涼まで」



さすが多美。

昔からの友人のみたいに、すっかり大北さんと意気投合してる。



「大北さん、何盛り上がっちゃってるんですか」


「何って、お前の失恋話だよ」


「はぁ?何すかそれ!」



あせる桂さんは、ソファにつまずきながら大北さんにすがりついた。



「内容は教えてくれるんだけど、肝心な相手を教えてくれないんだもん。大北さんて意地悪~」


「そこまで話すと桂が可哀想だからな」


「ちょっと大北さん!どこまで話したんですかっ!」


「涼にも教えてあげるー。聞いて聞いてー。アハハ……」




クスっ

なんだかいいな、こういうのも。



嫌な街だと思っていたけど、こんな時間の過ごし方もあるんだ。

多美の言うことに、ちょっと賛成。

寝る時間なんて、全然惜しくないかもしれない。



でも、そんな幸せな時間は、すぐに消え去ることになった。




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