ファンレター
放課後。
山口に呼び出された私は、トボトボと生徒指導部の教室へと向かって歩いてた。
横からは様子を伺うように、多美が話しかけてくる。
「気分でも悪くなって保健室に行ったのかと思ってたら、涼が授業さぼるなんてどうしちゃったわけ?しかも山口につかまるなんて、最悪じゃん」
「……」
何も言わない私に、多美はあきれた顔で言葉を続けた。
「本当に山口って最悪なんだから。何させられるか分かんないよ?」
苦笑いを返すことしか出来なかったけど、こうなる運命だったと、自分を納得させるにはちょうど良かったのかもしれない。
どうせ自分では何も決められなかったんだ。
そう、これで良かった。
十が東京に帰っても、ずっとファンでいればいいんだから。
ファンとして、応援し続ければいいんだから。
そんな自分に対する苦し紛れの言い訳に追い討ちをかけるように、生徒指導部の山口は、確かに最悪な課題を持ちかけてきた。
「羽田が授業さぼるなんてどうした。何かあったか?
まぁ、そこらへんのサボり常連の奴等とは違うからな。ちょっとばかりオレの手伝いしてくれれば、見逃してやる。もうさぼるなよ」
そう言って、机の上にはドサッと資料の束が置かれた。