ファンレター



「まったくよく降る雨だなぁ。考える気分にもならん。……ん?河野じゃないか。あいつ忘れ物でもしたか」



えっ、多美…?



山口を押し退けて窓の外を見ると、多美が門をくぐってこっちに走ってくるのが見えた。

私も即座に反応して、玄関に向かって走る。



「えっ、おい!羽田!」



何があったんだろう。

もう山口の声なんて何一つ聞こえない。



息が、また荒くなる。



「涼っ!」



傘をさしてたんだろうけど、制服の色はほとんど変わってた。



「多美、どうしたの?」



ハァ、ハァ…



お互いの息が落ち着くのを待つ時間も惜しかった。

発車の時間が、迫ってる。




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