ファンレター
「涼、やっぱり涼が行かないとダメだよ。十くんが待ってるのは涼だもん」
「多美……」
多美の口からそんな言葉が出るなんて、想像もしてなかった。
多美は、ずっと私と十の関係を知りたくて、私と十の仲を邪魔したかったはず……。
それなのに……
あれ?
もしかして、違うのかもしれない。
多美はずっと、素直に自分の気持ちを話してくれてた。
邪魔をしようとしてたことなんて、本当はなかったのかもしれない。
私が自分の気持ちに嘘ばかりついてただけで、多美はただ、いつも私のことを考えてくれてて。
私の本当の気持ちを、知りたかっただけなのかもしれない。
「多美……、私」
「いいから早く行って!もう時間がないんだから」
多美が私の背中を押す。
でもその後ろから、低い声が覆いかぶさってきた。
「羽田~、逃げるのは良くないよな?あれくらいの課題で許してやるって言ってんだからな!」