やまねこたち
気付いた時には頭からつま先まで濡れていて、全身を襲う熱っぽさがあたしを起こした。
「あーよかった、お前いま一瞬気絶したからよお」
声が出なかった。
非常に喉を走る器官が熱い。
は、気絶した?
それまじでやばいやつじゃん。なに笑ってんだよおめぇ。
睨みたくても、そんな気力もない。
蓮二はホースをはずして、シャワーのノズルに取り替えた。
お湯が流れてくる。
よく見ると、蓮二も相当消沈している。消沈したいのはこっちなんだよ。
タイルの上に座った蓮二の足の間に、座らされる。
あたしも相当疲労がたまっているようで、座ることさえままならなかった。上体が支えられない。
蓮二の折ってある膝に体を預ける。
水で冷えてしまった体を、お湯が溶かしてくれているみたい。生き返る感じって、いまの状態を言うんだ。
「く、るしかったわ、くそが」
痛む喉でそう紡ぐと、蓮二は上の服を脱ぎながら苦笑した。
「いいじゃねぇか、死ぬよりマシだろ」
その言葉が理解できなかった。
「…は、?死ぬ?って…」
「あとではなすっつの」
蓮二があたしの冷たく濡れた服を脱がす。勿論、全部。
今までそれが体温を奪っていたのか、素肌で感じるお湯の温度が心地良い。
腰と足の付け根に巻いていたベルトも、タイルの上に落とされた。
「…うあーあー、駄目になっちまった」
びしょぬれになった銃を片手で拾いあげて、蓮二は苦笑した。
ベルトと共に固定された銃は、頼りなく冷たいタイルの上に横たわっている。
「それ、気に入ってたのに」
「俺のやるよ」
「あんたのはでかいんだよ、あと重い」
ずるりと用意していたタオルを引っ張る蓮二。
水分を拭き取られる。
お湯の温かさで、ぼんやりとしてしまう。
「おい、生きてんのか」
「…生きてるわ、アホ。蓮二がたった今殺しかけたけど」
体を拭かれて、抱き上げられる。
体のどこにも力が入らない。まさに今、無気力状態。
疲れた、というより放心。って感じだ。
そもそもまだ体は熱を出した時の、そんなだるさ。
「蓮、…」
体が発熱して熱い分、蓮二の冷え切った温度が体に凍みる。
自分もシャワー浴びてくればいいのに。てか、浴びてこいよ。
だけどどうしても気力がわかない。悪態ならつけるのに。