世界の終りで愛を歌う
「ありがとう……大丈夫? とても疲れた顔をしているわよ……」
僅かなガソリンを給油していると妻が慌てて駆け寄り私に変わり給油してくれた。
「すまない。少し疲れた。でも大丈夫。私に任せて」
結局、か弱い女の……か弱いか?
いや、か弱い筈の力仕事はさせたくないので、二人で赤いガソリンの入ったら赤い鉄製の容器を持った。
初めての時は手が触れ合うと少し緊張したが、
もう5年になるさすがに慣れた。というか、彼女といるのが自然になった。
彼女と別れる事が想像出来なかった。
だが、未来を想像しなくては……。
試合の前にイメージトレーニングをして、
集中力と試合の流れを良くする為に。
事前に計画を立てるだけで人間は大きく成長出来る。
だから、私は来るべき別れの瞬間を思い、想像し、強くなろう。
やがて来る悲しみに耐えられるように。
このデートが最後になるかも知れない。
その最悪な瞬間は今日かも知れない。
彼女の大切な話とは別れ話。
彼女は今日、私に多く謝ったが、
自分の不倫が後ろめたいからだったのかも知れない。