恋文
駄菓子屋さんから10分ほど行った森の方にある、小さな科学館に着くと、悠哉さんは、
「懐かしい~!小学生の頃とかよく来なかった!?俺めっちゃ好きだったんだよねー!」
と、無邪気にハシャいでいた。
ココに来たい、と言ったアタシよりも嬉しそうだった。
そんなに星好きなのかな?
「アタシも。窮屈な学校の中で勉強しなくて良いから好きだった!」
「そんなこと言って、どうせ嫌いな授業だったらサボってたんだろ~?」
「そりゃあね!」
「あははっ!ダメじゃん!」
科学館の中は、アタシが小学生の頃となんも変わってなかった。
入り口には大きな地球儀があって、そのすぐ横の受け付けでスタンプを貰った記憶がある。
そのまま真っ直ぐ進んだら暗い廊下があって、あの頃はその廊下が怖くて嫌いだった。
でも、今見ると、その廊下は暗いだけじゃなかった。
昔は怖くて目を瞑って通っていたから気付かなかったけど、よく目を凝らさないと分からない程度に、小さな星が散らばっている。
「アタシ、小学生の頃はこの廊下大嫌いだった。真っ暗で何も見えないから、みんな消えちゃったような気がしてた。」
あの頃は気付くこともなかった星を指でなぞりながら、自嘲するような笑みをこぼす。
「でも、今は平気だよ!悠哉さんがいるもん!ねっ?」
アタシが悠哉さんの顔を覗き込むようにすると、悠哉さんはプイッと顔を反らしてしまった。
暗くてよく見えなかったけど、悠哉さんは今にも泣きそうか表情をしていたような気がする。
アタシ変なこと言ったかな?
「うあぁー…ホント、ハルちゃんは可愛いことばっか言う!」
悠哉さんの呟くような声が聞こえた。
「えっ!?」
アタシが驚いて声を上げると、ちょうど明るい場所に出た。
暗くて見えなかった悠哉さんの表情がはっきりと見えた。
いつもの優しい笑顔だった。
「俺で良いなら、いつでも側にいるよ。」
「~~っ!」
アタシは顔が赤くなるのが自分でも分かった。
今度は、アタシがプイッと顔を反らすと、「え?ハルちゃん?俺、変なこと言った?」と、心配そうな悠哉さんの声が聞こえてきて、余計に恥ずかしくなった。
「なんでもないっ!」
アタシはそう言って、足早にプラネタリウムの部屋へ入る。
悠哉さん、笑ってた。
良かった。泣いてなかった。
今にも泣きそうな表情の悠哉さんを思いだし、首を横に振った。
「先に行くことないじゃーん!」と、後から悠哉さんがアタシの横にドカッと座った。