恋文
「なぁーにしょぼくれてんだ。赤点か?」
上から玲二さんの声が降ってくる。
呆れたような、興味なさそうな、そんな声。
アタシはヤクルトの蓋を開けながら「ちーがうよ。」とだけ答えた。
すると、玲二さんはニヤッと笑って、
「悠哉か?」
「……ちーがうよ。」
「あっそ。お前本当、嘘ヘタな。」
「嘘じゃないって」
「顔赤いけど?」
「っ!!嘘っ!?」
「嘘。」
「~~っ!」
玲二さんについて分かったこと。
口下手っぽく見えて、意外とタラシ。
悠哉さんとそんなに変わらない筈なのに、常に玲二さんの方が1枚上手で、敵いそうにない。
ドSで、人が困った顔を見るのが好きで、大人っぽく笑う。
以上。
玲二さんと悠哉さんの関係もよく分からないけど、たぶん友達。
玲二さんは「違う」と否定していたが、悠哉さんはニコニコと笑ったまま「そうだよー」と肯定していたし、そのあとに「玲二はシャイだからハルちゃんの前では言わないだけで、本当は俺のこと大好きなんだよっ!」と言っていた。
まぁ、玲二さんは「言ってろ。」と澄ました顔でスルーしていたが。
とりあえず、2人の性格は真逆なのに、結構仲良さげだ。
「玲二さん。アタシが悠哉さん好きなのって変かな?」
「いや?別に?お前が誰を好きだろうと、他人にとやかく言われる筋合いはないだろう。」
それはそうなんだけどさ。
アタシが言いたいのはそう言うことじゃないんだけど。
玲二さんはアタシの気持ちを分かっていながらも、何も言わない。
あくまでも、自分は傍観者なのだ。
「じゃあ、悠哉さんの好きな人って誰か知ってる?」
「ああ。」
「綺麗な人?」
「…ああ。お前じゃまだまだ及ばないくらい綺麗な奴だよ。」
「ふーん…?」
玲二さんなら、さぁな、とでも言うと思っていたから、こんなにハッキリと綺麗だと言われると少し驚いてしまう。
それと同時に、変な劣等感を感じる。
玲二さんに綺麗な奴、だなんて言わせるほどだ、それはもう綺麗すぎる人なのだろう。
すっかり空気と触れあい、生ぬるくなったヤクルトを一気に飲み干し、気を紛れさせる。
こんな劣等感を感じたまま、悠哉さんに会っても楽しくないから。
そんなアタシの様子を見ていた玲二さんは、何が楽しいのか、また口角を微妙に上げながらアタシを見やる。
あー…この顔だけ見たらイケメンなんですけどねぇ…。喋っちゃうとSだからねぇ…?
きっと、気になるか?とか聞いてくるんでしょー。
分かってるよ、貴方様の仰りたいことはよーく分かりますよ。
そして、玲二さんはアタシの期待を裏切ることなく「なんだ、気になるのか?」と尋ねてきた。
ほら、ほらほらほら!
アタシの思った通り。
悠哉さんほどでないにしろ、玲二さんも分かりやすいなぁ。
「玲二さんには関係ないもーん。てか、悠哉さん遅いー!自分から呼び出しといてナイわー!」
アタシは話しを変えようと、チラッと時計を見ながら、悠哉さんへの悪態をつく。
ちょっとあからさま過ぎたかな。
玲二さんはムカつく表情のままだし、悠哉さんは遅いし。