恋文



ガラスにへばりつくように、ライオンの写メを撮りまくる。
くっそーぅ。キャメラ持って来れば良かった!

後悔の念を噛み殺しながら、ライオンを見る。
何度見ても可愛い。
コイツら完全にアタシをキュン死させる気だ。

「ハールーちゃん。」

ライオンにキュンキュンしていたアタシは、その声で、もう1匹の犬を置いて来ていたことを思い出した。

「悠哉さ~ん…」

「俺のこと置いてったしょ!!ひでーよ!」

「い、いや、ちがっ!だって見て!めんこいじゃん!めんこいライオンを見て駆け出さない人はいないって!」

アタシが2匹のライオンを指差すと、悠哉さんの目は分かりやすいほどにパアッと輝いた。

「可愛いよ!なにこれヤバイじゃん!」

アタシもかなりヤバイくらいハシャいでたけど、悠哉さんほどじゃない。
ぴょんぴょんと跳び跳ねて。ウサギか!!

ライオン親子のおかげで話しも逸れたし、万々歳。

その後は、ぐるぐると園内を回った。
猿山も見たし、熱帯館も見た。
アタシが1番好きだったのは狼がギリギリまで寄ってきてくれるヤツ!
悠哉さんはレッサーパンダだって。

狼のが良いじゃんね。

「ほい。ソフトクリーム!」

「ん。ありがとー」

悠哉さんからバニラとチョコのソフトクリームを受けとる。

「悠哉さんの何味?何か紫色だけど…」

「ハスカップ味だって!つい買っちゃった!」

「えー。美味しいのー?」

「美味しいよー!!」

悠哉さんは、わざと大口でパクリと紫色のソフトクリームを食べる。
口についたソフトクリームを、ペロッと舐めながら、うん!うまい!と笑顔。

「でもソフトクリームって言ったら王道のバニラだよー」

「とか言いつつも、バニラとチョコで悩んだ挙げ句、どっちも食べたいって言ってダブルにしたクセにー?」

「いっ、いいんだよ!バニラもチョコも王道だから!ハスカップなんて邪道!」

「邪道なかなか美味しい」

嫌味なのか?
それは王道を食べるアタシに対する嫌味なんだな?

「いいもーん。バニラとチョコ美味しいもーん。最高だもーん。あ、他に何味あった?」

「他の味に移る気まんまんじゃん!」

「だって王道ばっかじゃ飽きるじゃん」

「じゃ、ハスカップでも食ってろ。」

「ハスカップはちょっと…」

「なんだとーぅ!?ハルちゃんはハスカップの良さを分かってない!!」

悠哉さんはハスカップ農家か何かなの?
なんでハスカップにこんなに真剣なの?

そんな悠哉さんも可愛いから許すけどさ。

「だからハスカップ味のソフトクリームは美味しいんです!」

「どういうことでその結論に至ったのかは知らないけど、カンガルー見に行こ」

「俺もハルちゃんがなんでその結論に至ったのかは知らないけど、了解。見に行こうか。」

よく分からないまま最後はカンガルーを見て帰ることにした。
カンガルー館の中は熱帯館のように締め切っていて、生暖かい空気に包まれていた。

ガラス張りの窓から1つ目の部屋を覗く。
空。
まぁまぁまぁ、そういうこともあるよ。

2つ目の部屋を覗く。
空。
きっと散歩中なんだよ。うん。

3つ目の部屋を覗く。
空。
カンガルー館…?え?カンガルー館だよね?こえ。

4つ…ry

結局、7つ全ての部屋にカンガルーはおらず、出口の張り紙に『エサやり中です。今、カンガルーはいません。』と書かれていてキレそうになった。

せめて入り口に張って!
お願いだから出口に張らないで!!

「最後は微妙だったけど、帰ろっか」

「んー。」

苦笑いをしながら出口の扉に手をかける悠哉さんの後ろにつく。
そのまま外に出て帰ろうと思ったが、アタシは出口の脇にある、もう1つの通路を見付けた。

「悠哉さん。」

「え?ハルちゃん?え?」と戸惑っている悠哉さんの服の裾を引っ張り、細い通路を抜ける。
通路の先にはベランダに出る時の扉のような、簡素な作りの扉が待ち構えていた。

扉を押すと、ぶわっと涼しい風が吹き込んできた。

「わぁ!!」

風で揺れる髪を耳にかけながら、辺りを見回す。
そこは、小さな小さな遊園地だった。
2,3歳の子が遊ぶような滑り台と、ブランコがあるだけ。
遊園地というよりも公園ぽかった。

でも、滑り台とブランコの向こうに、パンダとウサギの乗り物があった。
よく小さな子が乗っているアレだ。

アタシは悠哉さんの裾を掴んだまま、パンダとウサギの乗り物の元まで走った。
悠哉さんは後ろ向きで走ってた。ごめんね。

アタシはパンダの乗り物に股がり、100円を入れるコイン口をジーっと見つめ、その後に悠哉さんの顔を見る。
これを交互に何度か行う。

「良いよ。100円くらい奢るよ。」

悠哉さんは呆れたように笑いながら、100円を入れてくれた。

「ふぉぉぉぉ!!!」

パンダの乗り物はゆっくりと動き出し、ノロノロと足の裏に付いてあるローラーを回転し始めた。

「………歩いた方が早くね?」

「良いのー!これに乗るのが楽しいのー!」

確かに横で並んで歩く悠哉さんの方が速いが、アタシはこれくらいのスピードが丁度良い。
こっちの方が、少しでも長く悠哉さんと居れる。



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