恋文
「じゃあ、アタシが悠哉さんを怒ってあげるよ。悠哉さんが悪いことしたら、アタシが怒る側になってあげる!」
最初、驚いたような顔でアタシを見た悠哉さんだったけど、すぐに視線を前に戻して、何秒かのタイムラグのあとクスクスと笑いだした。
「ぶぅ。何で笑うのさー、アタシ真面目に言ったつもりなんだけどー!」
「ごめんごめん!いや、そんなこと言われたの初めてだったからさー!ははっ!良いね、それ。俺が悪いことしても怒ってくれる人は少ないからねー。ハルちゃんが怒ってくれるのかー。」
悠哉さんは、そのあとも何度か、ハルちゃんがねー、と呟き、またすぐに笑いだした。
ハルちゃんが怒る姿なんて想像できない、と。
それはこっちの台詞だ!
悠哉さんが誰かを怒る方が想像できないわ!
平日の昼間から仕事サボって、アタシと駄菓子屋へ向かってるような奴が言っても説得力ないっつーのー。
アタシが拗ねたフリをして窓の外の方を向いていると、悠哉さんはアタシの頭をクシャクシャにして、拗ねんなよ、と悪びれもない様子で笑った。
本当にズルい。
悠哉さんはズルいよ。
アタシが怒れないこと分かっててやってるんだもん。
アタシよりちょっと長く生きてるからって、アタシより年上だからって、反則だよ。
そんな風に笑われたら、アタシは悠哉さんを好きになっちゃうよ。
大好きな人がいる悠哉さんを、アタシは好きになって、戻れなくなっちゃうよ。
真っ赤な顔を悠哉さんに見られたくなくて、窓の外を向いたまま、人の流れを見ていた。