ガーデンテラス703号


お風呂から出てリビングに行くと、ホタルがソファーに座って本を読んでいた。

私が自分の部屋に行くためには、そのソファーの前を通っていかないといけない。

近づいていっても、ホタルは文庫本を広げたままで私に気づく様子がなかった。


傘に入れてもらったこと、タオルやお風呂のこと。

もう一度ちゃんとお礼を言うべきだよね。

そう思うけど、熱心に本を読むホタルに声をかけづらい。

邪魔して睨まれてもイヤだしな。


ソファーを通り過ぎて部屋の前まで行ったものの、中に入るのが躊躇われてドアの前でうろうろする。

でもやっぱり、お礼言ってから寝ないとスッキリしない。

散々悩んだ結果、ソファーに座るホタルを振り返る。

そのとき、ちょうどタイミングよくホタルが開いていた文庫本をおろした。


「さっきから、そこでうろちょろ何してんだよ」

ホタルが怪訝そうに私を見てくる。


「気づいてたの?」

「そりゃ、そんだけ挙動不審だったら」

気付いてたなら、声かけてくれたらいいのに。



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