ガーデンテラス703号
「仕事ではないんだけど、ちょっと返答に困る誘いを受けてて……」
「男がらみ?」
言葉を濁す私を見て、ホタルがにやりと笑う。
「雨にぬれて風邪をひく原因になったのも、その男のせいだったりして」
すぐに答えられずにいると、間髪いれずにホタルがそう突っ込んでくるからすごく焦った。
「そ、そんにゃんじゃ……」
「やっぱりそうなんだ」
否定しようとしたのに噛んでしまって逆効果。
食事の手を止めて頬杖をついたホタルが、愉しそうに私を見てくる。
「悩み事なら聞いてろうか?」
からかい口調でそう言われて、頬が熱くなる。
「別に。そういうのはいりません」
昨日は雨にぬれた私に優しくしてくれたし、今作ってくれたリゾットだっておいしいし。
思ってたよりいい人かもって思ったけど、前言撤回だ。
やっぱり、目つき悪いし感じ悪い。
私はスプーンを握り直すと、冷め始めたリゾットを大急ぎで口の中に押し込んだ。
「ごちそうさまでした」
一応感謝の気持ちを伝えつつ、立ち上がりながらホタルを睨む。