ガーデンテラス703号
「ごちそうさま……」
おかわりを飲み干してカップをソーサーに戻すと、ホタルが私の顔をジッと見てきた。
目付きは悪いけど、整った顔立ちをしているホタルに真顔で見つめられたら、意味もなくドキドキしてしまう。
「あ、あの……」
「ん?」
「へ、部屋に戻っていいでしょうか。もうちょっと休んどこうかな、って」
ホタルがあまりに見つめてくるから、声を出すのが緊張した。
私の顔、何かついてるだろうか……
口の周り汚れてる……?
さりげなく、手のひらで頬や口元をこする。
私のそんな仕草をも、ホタルは黙って見つめてくる。
それからしばらくして、彼が口を開いた。
「そうすれば?」
ずいぶん長いこと人の顔を見てきたくせに、彼の口から出てきた言葉がそれだけだったから拍子抜けする。
何だったんだ、今の間は……
「じゃぁ、ごちそうさまでした」
立ち上がったけれど、ホタルはさっきみたいに私を引き止めようとはしなかった。