ガーデンテラス703号


「じゃぁ、遅くに悪かったな」

リビングでお茶を飲んでしばらく話すと、基さんは時計を気にしながら立ち上がった。


「もう帰るの?」

淋しそうに見上げるシホの頭を、基さんが子どもにするみたいにくしゃりと撫でる。


「あぁ、明日取引先との会議があるから帰って資料の最終チェック」

「忙しいんだね。ご飯ちゃんと食べてる?すぐにホタルに作らせるよ」

シホが腕を引っ張って立たせようとすると、ホタルが嫌そうに眉を顰めた。


「は?何で俺が作らないといけねぇんだよ」

「作るの、あんたしかいないでしょ」

「ありがとう。今日は急ぐからもう行くわ」

シホとホタルのやり取りを聞いて、基さんがクッと笑う。


「そっか」

基さんにもう一度断られて、シホが不満そうに頷く。


「ホタルのメシは、今度店に食いに行くよ。唯香も連れて行くからよろしくな」

基さんがにっと笑って、ついでみたいにホタルの頭をぐしゃりと撫でる。

それを不満そうに振り払うホタルは、基さんの前で小さい子どもみたいだった。


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