ガーデンテラス703号
「基ちゃんもついに結婚しちゃうのかー。基ちゃんのタキシード姿、きっと似合うだろうな。でも、紋付袴も似合いそうだから洋装だけじゃなんか勿体無いよね」
飲み始めてからシホが口にするのは、基さんの名前ばかり。
直接彼のことが好きだと打ち明けてくれたわけではないけれど、基さんの容姿や性格を褒める言葉のオンパレードに、シホが彼を好きで、彼が結婚してしまうことを受け入れきれていないのがありありと伝わってくる。
早々にビール1缶を空けたシホが、大きなため息をつきながら2本目に手を伸ばす。
それに気づいたホタルが、先に手を伸ばしてビール缶を上から手で押さえた。
「シホ、ペース早ぇよ」
「うるさいっ!」
だけど、シホは不貞腐れた顔でホタルを睨んで、彼の制止の手を思いきり払いのけてしまう。
「いてぇな」
「だったら口出ししないでよね。基ちゃんは、ホタルみたいにいちいち口うるさくなかった」
酔いが回っているシホの、ホタルに対する口調がいつもよりキツい。
そして、会話の合間合間に基さんを評価する言葉を織り交ぜてくる。