ガーデンテラス703号


リビングのドアを開けて廊下に出たとき、腕組みをして部屋のドアに凭れかかるようにして立っているホタルの姿が目に入った。


何してるんだろう。

立ち止まると、私に気づいた彼が眉根を寄せて睨むようにこっちを見てきた。


え、睨まれてる……?

私、何かしただろうか。

さっきまで、割と普通に一緒にお酒を飲んでたと思うんだけど。

睨まれる覚えがないから、訳がわからず。

それでも、ホタルの冷たい視線につい怯えてしまう。


「おい」

彼から目をそらしてバスルームへと逃げ込もうとすると、低い不機嫌そうな声で呼び止められた。

聞こえないふりして、さっさとバスルームに鍵をかけちゃおう。


「おい、聞こえてんだろ?」

そう思ったのに、聞こえてないふりをしていることはしっかり彼にバレていたらしい。

低い声でそう訊ねられて、ホタルのことを無視できなくなった。


「はい。何でしょう?」

ここ最近、割と優しい人なのかなと思う場面もあったけど。

睨みながら低い声で話しかけられたらやっぱり怖い。


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