ガーデンテラス703号


遥斗が予約の名前を伝えると、ウエイターが私たちを店の一番奥の個室に案内してくれた。

ソファー席の個室は広くて、かなりプライベート感がある。

テーブルを挟んで向かい合うように設置されているソファー席に、私たちは男性メンバーと女性メンバーに分かれて座った。

だけど、遥斗だけは座らずに立ったままでいる。

不思議に思っていると、男性メンバーのひとりが遥斗に声をかけた。


「森岡、まだだって?」

「あー、はい。10分くらい遅れるって。そろそろ来る頃だと思うんですけど……連絡ないですね」

遥斗がスマホを取り出して何か確認する。


遅れるって……

まだ誰か来るってこと?

スマホを弄っている遥斗の横顔を見つめる。

彼がいつまでも立ったままでいることが、私を不安にさせた。


「遥斗、まだ誰か来るの?」

ソファー席の端に座った私とは一番離れたところにいるシホが、遥斗に声をかける。

私が聞けなかったことを聞いてくれてありがたいと思う反面、遥斗がなんと答えるのかが怖い。


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