ガーデンテラス703号


頷いて、買い物袋を反対の手に持ち直す。


「じゃぁ……」

「あ、もしよかったら、これからメシでもどう?」

私はこれで……と頭でも下げて帰ろうと思ったら、森岡さんが車のほうを指差しながら誘いかけてきた。


「こ、これからですか?」

「うん。もし、暇してるなら」

森岡さんににこりと笑いかけられて、困ってしまう。

暇と言われたら暇だけど……

困って手元に視線を落としたら、それに気づいたらしい森岡さんが残念そうに眉を寄せた。


「あ、ごめん。もう夕飯用意してた?」

「あ、はい。ちょうど今買ってきたばかりで……」

「そっか」

「それに、この格好ではちょっと……」

デニムにパーカー、それにほぼすっぴんの顔で森岡さんと食事に行くのは気がひける。

もともとあまり乗り気にはなれないし、お弁当の入った買い物袋と普段着過ぎる今の格好が彼の誘いを断るちょうどいい理由になる。


「せっかく誘ってもらったのに、すみません」

小さな声で謝ったら、森岡さんがひどく残念そうな顔をしたから、何だか申し訳ない気分になった。


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