ガーデンテラス703号
「あの、じゃぁここで……」
黙って残念そうな表情を浮かべる森岡さんに小さく会釈する。
そのまま背を向けようとしたら、彼に呼び止められた。
「じゃぁ、また来週末にでも飲みに行こうよ」
「え?」
「時間と場所はまた連絡するから」
「え、あの……」
私が戸惑っているのがわかっているはずなのに、森岡さんは強引に約束を取り付けてきた。
そして、私の正式な返事を待つことなく車に乗り込んでしまう。
「じゃぁ、またね」
森岡さんは車にエンジンをかけて運転席の窓を開けると、笑顔で私に手を振ってそのまま行ってしまった。
森岡さんの車を茫然と見送ったあと、ふとホタルの顔が過って、強引な彼の誘いをはっきり断らなかったことを後悔した。
何やってるんだろう、私……
自己嫌悪に陥ると同時に、いつもはっきりしない私を何度も誘ってくれる森岡さんの厚意を不思議に思う。
少し憂鬱な気分になりながら、ふらふらとマンションに戻った。