ガーデンテラス703号
「確か、この前飲んだときにナッツ残してたよねー」
ドレスでガサガサとキッチンを漁るシホは、少し異様だった。
「結婚式で飲んだんじゃないの?」
呆れ顔で訊ねると、シホが声をあげて笑った。
「飲んだよー。披露宴でも二次会でも、ワインとかシャンパン散々飲んだ」
「じゃぁ、もう……」
これ以上飲むのはやめとけば?
止めようと思ったら、お目当てのおつまみを見つけたらしいシホが、ダイニングテーブルに戻ってきて、椅子を引いてどかっとそこに腰掛けた。
結び目が緩んでいたのか、ドレスの上から纏っていたシルバーのストールが、肩からずれる。
シホは煩わしそうにそれを外すと、テーブルのビールをつかんで蓋を開けた。
シュパッと小気味のいい音をたてたビールを見下ろしながら、シホがそれまでとは打って変わって急に声のトーンを落とす。
「飲んだけど、全然酔えないよね。基ちゃんは幸せそうだったのに。あたし、ちゃんと笑ってその幸せを祝えてたかな……」