ガーデンテラス703号
いつもバッチリなメイクで髪型も整えているシホなのに、今の彼女はほぼすっぴんで、髪の毛先も所々跳ねていた。
「どこかでちゃんとメイクしなきゃ」
私がシホの顔をまじまじ見ていると、彼女が顔を顰めて独り言みたいにぼやく。
「途中まで一緒に行く?」
髪の毛の先を弄りながら憂鬱そうな顔を浮かべるシホに訊ねる。
「うん、そうしよう。最近あんまり話してないし」
すると、それまで渋い顔ばかりしていたシホがにこりと笑った。
私の会社とシホの職場は、途中まで同じ方向だった。
通勤する人たちで溢れかえる駅のホームからふたりで電車に乗り込み、混雑している電車の中で、ふたり並べる場所を確保して、それぞれに吊り革を持つ。
「朝早いと電車も混んでて大変だよね。私、いつも通勤ラッシュから外れた時間帯に乗ってるから、あゆかが毎朝こんな満員電車で通勤してるのがほんとにすごいと思う」
「どうもありがとう」
窓の外に視線を向けながらため息を吐くシホを見て苦笑いする。