ガーデンテラス703号
だから……どうして私は睨まれてるんだろう。
ぶるっと小さく震えていると、シホが私の横をすり抜けて食卓の椅子に座った。
それからコーヒーカップに手を伸ばして私に手招きをする。
「あゆかもこっち座って。ホタル、目つきは悪いけどコーヒー淹れるのはうまいんだ」
「目つき悪いは余計だ」
ホタルはシホの言葉に不機嫌そうに反論すると、キッチンに戻って自分用に淹れたらしいコーヒーのカップを手にとった。
「だって、事実でしょ」
シホがからりと笑いながら、コーヒーカップに口をつける。
それから私のほうを見て、ホタルのことを無遠慮に指差した。
「あ、遅くなったけど紹介するね。あいつが、ここで一緒に住んでるあたしの幼なじみの梨木 蛍(ナシキ ホタル)。目つきは悪いけど、人としては悪いやつじゃないから安心して」
シホはホタルのことをかなりざっくりと私に紹介すると、キッチンに立つ彼のほうに向き直った。