ガーデンテラス703号
「ホタル。この子があたしの大学のときの友達の榎本 あゆか。美人でしょ?」
私を紹介しながらにこりと笑うシホに、ホタルがあまり興味なさそうな視線を向ける。
それからすぐに私に視線を移したホタルは、こちらをたっぷり数秒睨んでから口を開いた。
「よろしく」
にこりともせず、そう挨拶されて戸惑う。
「いや、あの――」
よろしくって言われても、私はまだ全然「よろしく」するつもりなんてないし。
「シホ、私――…」
「よかった。ホタルがあゆかと仲良くやれそうで」
ここに住むことを断ろうと口を開いた私の言葉を、シホがにこやかな笑顔で遮る。
仲良くって……
どういう角度で私と彼を見たら、そんなふうに思えるんだろう。
「シホ、私――」
「ここで一緒に住むにあたって、細かいルールとかはないから安心して。自分の好きなように生活してもらっていいから」
シホは私に向かってそう話すと、ふと思いついたようにぱちんと手を叩いた。