ガーデンテラス703号


「私だって、全然何もないよ」

「えー、嘘だー」

「ほんとだって」

「ほんとに?」

「ほんとだよ」

既に何杯かグラスワインを飲んでいるシホが、何度もしつこく問いかけてくる。

若干ムキになって否定していると、何を思ったのか、隣のテーブルのほうにちらっと視線を向けたシホが、にやりと笑った。


「ねぇ、じゃあホタルは?」

「…………」

シホにそう問いかけられて、一瞬頭が真っ白になる。

もしかして、私の気持ち、シホにバレてる?

右手にフォークを握りしめた状態で言葉を失っていると、私たちのテーブルの上にすっと黒い影がかかった。


「食べ終わってる皿、下げるぞ。ついでに追加注文あれば聞くけど」

頭上がホタルの低い声が聞こえてきて、今度はドクンと勢いよく心臓が跳ね上がる。

今のシホの言葉、ホタルに聞かれなかっただろうか。

そして、それに対する私のあからさまな反応をホタルに見られなかっただろうか。

そう思ったら、心臓がバクバクなって、すぐそばに立つホタルの顔を見上げることができない。


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