ガーデンテラス703号
「あ、ちなみに。恋愛に関しても特に制限ないから」
シホが私とホタルを交互にちらりと見てにたりと笑う。
「は!?」
「あ!?」
私の驚嘆の声と、ホタルの怪訝そうな低い声がハモる。
「じゃぁ、そんな感じで。解散!」
シホはそう言ってソファから勢いよく立ち上がると、自分用に淹れられたコーヒーカップとカバンとコートを持って自分の部屋へと退散した。
シホが立ち去ったあと、リビングには私とホタルのふたりが取り残される。
ホタルに淹れてもらったコーヒーのカップを持ちながら、困惑して立ち尽くしていると、彼が私のほうに歩み寄ってきた。
私の前に立ちふさがるように近づいてきた彼に、びびって一歩後ずさる。
すると彼は、私のことを見下ろしながら無言でこっちに手を伸ばしてきた。
な、なに……!?
さらにもう一歩、ホタルから遠ざかろうとすると、彼が私の手からコーヒーカップを奪い取る。