ガーデンテラス703号



「ちょっとごめんね」

香織はそう断ると、私から数歩距離をとって電話に出た。

相手が目の前にいるわけでもないのに、スマホを耳にあてて話す香織は幸せそうににこにこと笑っている。

スマホを握る彼女の右手の薬指にはピンクゴールドの細い指輪が嵌められていて、それが私に向かってキラキラと自己主張していた。

香織はいつのまにか遥斗主催の合コンで出会った和田さんと付き合いだしてて、その後順調らしい。

しばらく待っていたら、電話を切った香織が申し訳なさそうに私に歩み寄ってきた。


「ごめん、あゆか。私、ここで別れるね」

「え、帰らないの?」

「帰るんだけど……仕事帰りの和田さんが近くまで来てるみたいで、家まで送ってくれるって」

「あぁ、そうなんだ」

「ごめんね」

私が首を横に振ると、香織はもう一度私に謝って、和田さんが迎えに来るという場所に向かって歩いて行ってしまった。


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