ガーデンテラス703号



お金を渡すとき、戸田くんの手が軽く私の手に触れる。

その手を見ながら、戸田くんがぼそりと小さくつぶやいた。


「ちなみに、ルームシェアの相手って女の人ですか?」

「え?」

瞬きしながら聞き返すと、戸田くんが焦ったように首を横に振った。


「あ、すいません。別に深い意味はないんです。ただちょっと訊いてみただけっていうか」

「戸田くん……?」

「あ、タクシー代ありがとうございます。また明日」

「うん、明日」

笑いかけて手を振ると、戸田くんは小さく会釈してタクシーに戻っていった。

戸田くんを乗せたタクシーが走り去るのをしばらく見送ってから、マンションのエントランスに向かう。

オートロックのドアを開けて、玄関ロビーに足を踏み入れようとしたとき、後ろから人が近づいてくる気配がした。

同じマンションの住人かな、と振り返ろうとしたとき、いきなり強い力で肩をつかまれた。



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